浅野佑麻『みえること つながっていること 子育て支援センターを併設したこども園』(2018年度Diploma Design Prize ノミネート)
阿佐ヶ谷駅南口から南に伸びる中杉通り沿いの敷地に、子育て支援センターを併設したこども園を計画した作品である。作者の興味は、時に周辺住民から迷惑施設であるかのように捉えられる幼児教育/保育の場を、いかに地域に開かれたものとするか、そのための建築はどのようなものであるべきか、という点にある。作品のデザイン的な特徴となっている木製の格子による波打つような壁は、施設に求められる安全管理や運用面も配慮しながら「みえること、つながっていること」を実現するために導き出されたもので、その形状は数多くのスタディモデルによって導き出されている。敷地選定・平面計画も含め、丁寧に考えられた作品である。
桐生渚『人と自然と動物と』(2018年度Diploma Design Prize ノミネート)
作者の地元である神奈川県秦野市の7箇所に敷地を設定し、人と自然と動物、どれか一つに偏るのではなく、そのいずれにとっても有益な建築とはどのようなものか、という課題に取り組んだ作品である。結果としてできた7つの作品はいずれも、人間のために計画される通常の建築とは異なり、建築のようにも、地形に応答した彫刻のようにも、あるいは環境装置のようにも見え、ひとつひとつはささやかな規模であるが、愛情深く考えられている。浮世絵のようなタッチで描かれたドローイング、図面、模型のそれぞれが丁寧に表現されており、完成度の高い作品である。
小林和香奈『モノづくりと価値』(2018年度Diploma Design Prize 金賞、近代建築別冊『卒業制作2019』掲載)
再開発が進む渋谷の中心商業地域に、モノづくりをテーマとして、工房・展示施設・宿泊施設からなる複合建築を提案した作品である。敷地は公園通りの中腹にあり、目前で大規模商業施設の計画が現在進んでいる場所だが、本計画の柱とスラブがあらわしにされた外観は、周辺の華やかな雰囲気とは異なり、むしろ抑制的である。場所ごとに階高を変え、室内が上下方向にも連続する空間は、一種の建築的な広場のような場所となっていて、ここを活動拠点とする作家たちが自ら空間に関わり、作り上げていくことが期待されている。商業的に演出された都市空間の中で、モノづくりが建築デザインの価値にもなり得ることが表現された作品である。
二見晃巨『これからの戸建住宅団地のあり方 〜新しい家族のかたち〜』(2018年度Diploma Design Prize銅賞)
作者の育った戸建住宅団地を対象としたリノベーションの提案である。単体の住宅を対象とするのではなく、数件の住宅を対象とした、街並みへの提案となっていることに特徴がある。既存住宅はあるものは切り分けられ、あるものは曳家で大胆に位置を移動されることで、住宅の間に様々な外部空間が生み出される。ひとつひとつの建物規模が小さくなることで、次第に外部は内部と等価な重みを持つようになり、既存建物の趣を外観に残しながら、そこに全く新しい街並みが生まれる。リノベーションの提案としてはファンタジックだが、これからの住宅地のあり方を示す提案と見ることも可能なプロジェクトになっている。
荒木千菜『ホタルのまち』
杉山夕花『新たな道筋 物の持つ可能性を広げて』
杉谷馨『次期旧横浜市庁舎の開発〜リノベーションによる保存計画と創造の狭間で〜』
菅野楓『雪がふる街〜風景をつくる建築〜』
川上寛大『ヒトとヒトのつながり 過疎地における地域交流の場』
泉香月子『建築的森林による建築への誘導について』
津村藍『営み-町の中に小さな街-』
藤生竜矢『これまでとこれから 家族と町のための家』