石川直樹『市場による活動拠点 - 鎌倉野菜を中心に広がる出会いと繋がり - 』
京野菜に続き有名になってきた「鎌倉野菜」の市場を、地域住民・農家・観光客が集い、賑わい、そして鎌倉の繁栄へとつながる人々の交流拠点とすることが本計画の目的である。現在、鎌倉野菜の直売所となっている鎌倉市農協連即売所は、昭和3年から続く歴史ある市場だが、規模が小さく、また、人々が集う場所としては薄暗いため、市場を知っている人でないと入りづらいのが現状である。そこで本計画では、多くの人に鎌倉野菜の良さをアピールし、そこから出会いと繋がりを生むことのできる場所として、新たな市場を提案する。
佐藤舞奈『てるてのもり 自然に囲まれたこども園と集いの場』
近年、都市部、都市郊外部で深刻なのが待機児童問題である。母親が働くために子供を保育園に入れたくても、保育園が満員で入れない、という問題が当たり前になってしまっている。子育ての悩みを一人で抱え込んでしまい、児童虐待などの犯罪を犯してしまう人も増えている。 待機児童を増やさないための施設、悩みを打ち明けられる相談の場所を設け、地域の人が見守れる環境が必要だと考える。 JR相模線の上溝駅と公園を結ぶ斜面を、本来の自然勾配に戻して傾斜を緩やかにし、人が集えるような施設と地域に密着したこども園を、傾斜に沿って計画する。
佐野翔哉『地域の再生は駅から 〜街の玄関口富士駅の再生〜』(2015年度足立賞)
富士駅は東海道本線、この駅を起点とする身延線の2つの鉄道路線と、富士市循環バスや富士宮方面行きバスなどが発着しており、富士山周辺エリアへのアクセスの拠点となっている。富士山が世界文化遺産に登録され、注目度が高まっているため駅の利用客は増えているが、店舗の閉鎖などが相次ぎ、商店街など駅周辺では昔のような賑わいがなくなってしまった。また、駅自体にも魅力がなく、人をつなぎとめる場所となっていないことが現状である。本計画では、現在の駅舎と自由通路を再構築する。自由通路を富士山の見える軸線に合わせることによって、富士山の見える展望テラスへと自然に人が流れるように計画した。ガラス張りの自由通路は、駅の北口から見た時に展望テラスとなっていることを認識してもらうために、ファサードの外側に跳ね出している。
中島雅樹『ラプラスの尾根 〜地域復興の国際センター〜』
二つのアルプスの見える町駒ヶ根に、地域復興と国際交流促進のため、大学生と地元住民による「国際センター」を計画する。駒ヶ根は長野県南部に位置する自然が豊かな町で、観光客やスキー客でにぎわうが、近年の少子高齢化の影響もあり、若者が都市部に流出し、農業の人材不足が不足している。人材を埋めるべく東南アジア諸国を中心とした諸外国からの労働者が目立ち、農村部でもグローバルな社会を意識する機会が増えた。 本計画では過疎化が進行する現在の駒ヶ根に、次の世代を担う若者を全国から集める。地域レベルの視点・国際レベルの視点から社会を考察できるような人材を、世代を超えて育てていく。
奈須光『繋がる広間 教育を通した地域活性化』
子どもが成長していく上で、人との交流は重要な意味を持つと考えている。本計画の敷地である神奈川県三浦市三崎町は過疎化と少子高齢化が進み、かつて栄えていた商店街では閉店する店が多くなっている。本計画は、子どもがより多くの人と交流し、刺激を受けられるような空間を作り、商店街の人々と子どもたちの交流をうながす。子どもを持つ若者が暮らしやすい環境として、子育てを支援するコミュニティのための広場を提案し、地域活性化につなげることが目的である。
布川真衣『記憶の場所 葬祭場・火葬場による神奈川台場跡地の利用』(2015年度足立賞、JIA神奈川卒業設計コンクール審査員特別賞)
かつて東海道五十三次のひとつである神奈川宿が存在した神奈川県横浜市神奈川区は、近代都市横浜の母体でもあったが、関東大震災や第二次世界大戦によって歴史的遺産の多くが失われた。本計画では、神奈川区の土地の記憶として残されている歴史的遺産の中で「神奈川台場遺構」に焦点をあてる。遺構を取り巻く人々の暮らしの場が「生きる場」ならば、遺構跡地は「死を表す場」であると位置づけ、そこに葬祭場と火葬場という「人の死」の要素を取り入れる。この地域に元々住んでいる人、新たに移り住んできた人、この両者に地域の歴史を知ってもらい、誰もが日常生活のなかでは目をそむけてきた「死」について意識し、この地域で住むだけではなくて「暮らす」ということについて考えてもらいたい。
横井樹里『FEELING 感受性を豊かにする空間』
計画敷地は神奈川県茅ヶ崎市下町屋、国道1号線と鶴嶺八幡宮の参道が交わる交差点付近である。敷地東側の道は茅ヶ崎4大祭りの一つである浜降祭に使われており、毎年祭りの時期は多くの人が溢れている。敷地南側には千の川が流れ、川をまたぐ橋は東海道五十三次で「南湖の左富士」として有名である。近年世の中では「紙離れ」が進んでいる。インターネットは情報量が多く、どんな事でもすぐに答えが返ってくるが、その一方、画面ばかり見ているために近くの物事や、近くの人にすら気づけない事がある。SNSでコミュケーションを取るのも良いが、人間なのだから、画面ではなく同じ空間でコミュケーションを取るべきだと私は思う。そこで私は言葉と感情のボキャブラリーを増やせる空間、つまり感受性を豊かにする空間を提案したい。提案内容は複合文化・商業施設であり、最も主要なプログラムは図書館である。
渡邉拳『GOZAPARK 農業支援施設と地域交流拠点』
計画地は川崎市最大の都市計画緑地内にあり、生田緑地と隣接する向ヶ丘遊園跡地である。多摩川と共に歩んできたこの地域には、住宅地の中にマスカット畑や梨畑がいたるところにあり、青いネットで囲われた光景が地元の人には馴染み深い。特に梨は川崎市の特産物であり、多摩川沿いの環境を活かした梨栽培が江戸時代から行われ、一時期は川崎市の一大産業であったが、今では住宅地の中に点々と残っている程度になっている。本計画では環境に恵まれた敷地に、農業支援施設と地域交流拠点を提案する。若い世代 の多いこの地域から農業労働者を確保しつつ、地域住民の交流場所を設けることによって農業がさらに身近な存在になると考えた。