赤澤 俊太『建築物における「半外部的空間」「半内部的空間」 の研究及び設計(大阪鶴橋本通商店街を対象とした提案)(設計を主とする)』
大阪・鶴橋本通商店街を対象敷地として、多様な質を備えた半屋外空間(中間領域)を持つ建築物の提案を行なったプロジェクトである。一般的にやや曖昧な概念である中間領域を、作者独自の視点である「半外部的空間」「半内部的空間」という観点で再定義し、その知見を生かして設計を行なっている点に特徴があり、迷宮的で猥雑なエリアとして知られる対象敷地に、当初からの空間的な特徴を継承しながら、新たな用途と空間的な広がりを持つ場所(市場)を創造している。昨今のコロナ禍により、都市における半屋外空間はその重要性が見直されているが、その観点からも興味深く、今後の展開が期待できる作品である。
荒木 千菜『都市における「第二の地表」としての屋上空間の活用法に関する研究及び設計 ― 横浜・関内・関外地区を対象とした提案 ―(設計を主とする)』
JR関内駅付近の数カ所を対象敷地として、これからの都市における屋上空間のあり方を再定義することを目指したプロジェクトである。作者が新たに提案した建築物は、既存コインパーキングの土地に、その場所の「空地(ヴォイド)」としての特性を生かしながら建てられた鉄骨フレームによる「火の見櫓」のような複数の構造物であるが、この構造物自体は一般的な意味での「用途=床」を持たず、既存建物の屋上への垂直アプローチとして機能する。そのことによって、これまで行き止まり空間の集合体だった都市の中層建築物群を屋上で物理的にネットワークさせ、新たな居場所としての価値を与えるとともに、災害時の避難通路としても機能させている。
イ ジュンホ『室内・建築物・都市における「可変性」に関する研究および設計 ― 韓国・大田市の旧都心を対象とした提案 ―(設計を主とする)』
韓国・大田市の旧都心地区を対象敷地とした都市再生プロジェクトである。現在この場所で大田市により計画されているスクラップ&ビルドによる大規模開発案に対して、作者は持続可能な「可変性」という概念を様々な次元で適用し、室内、建築のスケルトン/インフィル、そして都市デザイン(市街地再開発)のそれぞれのスケールで、領域横断的に提案を行っていることに特徴がある。とくに都市スケールにおいては、20世紀前半の日本統治時代からの都市形成史を読み解き、街路構造や既存建物の一部を継承していくことによって、過去と現在、そして将来を接続した計画を行なっており、そこに作者のコンセプトである「可変性」があらわれている。