池田智樹『隣り合う路地裏 - 住民と地域による空間シェア - 』
現在の一般的な集合住宅は地域との関係性が希薄であり、集合住宅内部のみで機能が完結してしまっている。また集合住宅内部でも上下左右の関係性が薄くなりつつあり、集合住宅でありながら住民の孤立が起こっている。隣に住んでいるにも関わらず希薄な関係のため、トラブルの発生など問題も起きる。この計画では、集合住宅の一種である「独身寮」を題材に、住民同士の関係性を向上し、さらに集合住宅と地域の関係を高める住まいのあり方を提案する。
井上樹『結びの場 富士宮市大宮商店街の再生計画』
静岡県富士宮市の大宮商店街は高齢化や大型ショッピングモールの影響を受け、空き店舗や空き地が目立つ「シャッター商店街」になりつつある。その一方で富士宮市は古くから「富士登山の一合目」として知られ、商店街の北東に位置する浅間大社には訪れる参拝客が多く存在する。また、年間通して開催されている商店街主催の大小のイベントや、大社の祭事には、地元住民が集まり賑わう姿が見られる。
本計画では土地の歴史的背景を読み取り、現在空き店舗や空き地、駐車場になっている虫食い上の空間を利用し「参拝客を商店街に呼び込み、地元住民の暮らしをより賑やかにするプログラム」を配置することで、参拝客と住人のつながりを生み出し、地域の交流、活性化につなげる。
海野優作、松下知里『node edge 〜街としての緑と人を繋ぐ接点〜』
本計画にあたり、まず「映画」というキーワードから建築を構想することを考えた。映画を鑑賞するとき、私たちは「非日常」と「日常」という境界を超えることができる。敷地として選定した横浜の新山下地区では、街が建物や斜面などにより分断されているが、本計画では分断された街を繋ぎ、「境界を超え」「距離を感じ」「日常から非日常へと変化する」経験を、新たな建築が作り出す。これを映画で例えると「スクリーンの役割を担う空間」である。対称的な性質を持った街同士をただ繋げるので無く、空間の変化を持たせながら繋げることが、本計画の目的である。(海野)
横浜の新山下地区は、みなとみらい地区や元町地区などから近いが、高速道路と港の見える丘公園により他の街から分断されている。また、計画地の南側に位置する新山下商店街は時代の変化に伴い、周辺に大型量販店などが増えたことにより以前の活気を失い、2012年に解散している。その一方で、近くには元町商店街など有名な商店街がある。
これらの周辺環境を踏まえて、新山下地区の端に当たる計画地に集合住宅を設計し、これまでの街のあり方を残しつつ、人々が入り込む新たな街を作り、新しい住民を入れることで街の活性化を試みる。(松下)
亀山岳司『H-L apartment 高層集合住宅におけるヒエラルキーの解消』
現在の高層集合住宅は、各フロアに同じようなプランの住戸ユニットが並び、それが積み上がっている。そのため、下から上まで建物のファサードは単調となり、同じような高層集合住宅ばかりになってしまう。
また、住人同士のコミュニティーは上下階の間だけでなく、左右に隣接した住戸の間でも希薄である。さらに、上下階の間では階層格差(ヒエラルキー)が生まれている。これは、住戸の間取りや大きさ、機能は同様である一方、住戸から見える景色が階数によって異なるため、住人間で上階ほど階級が上であるといった固定観念が存在するためである。本計画は、高層集合住宅における上下階のヒエラルキーの解消を第一目的とし、住人のコミュニティーの誘発、多様性のあるファサードなどの建築的な提案によって、これまでの固定化された高層集合住宅のあり方に対し、改善を試みる提案となっている。
松原裕太『新しい伝統としての拠点 新旧芸術館』
かつて平安京と呼ばれた京都は、碁盤の目状の整然とした街並と同時に、古くから伝わる技術や祭、文化などが何世代にも渡って受け継がれてきた。また、近世、近代、現代のその時々に生まれる先駆的な芸術家や思想家たちの活動を支援し続けてきた都市でもある。しかし現状では、それらを展示するスペースはビルの一角や、小学校を改築した展示スペース等しかなく、決して充実しているとは言えない。
そこで、伝統と先進性の共存する京都の未来にふさわしい、伝統工芸と現代アートの展示空間を計画する。