小笠原洋介『Higashihama Promenade - 江ノ島砂丘ができるまで - 』
江の島東浜は都心から最も近く、長い歴史と人気を誇る海水浴場だが、市街地と海岸の間は国道134号線の擁壁によって阻まれている。この計画は、現在は1本の「線」で分断されている両者の間に起伏と広がりを持つ「空間的な境界」を挿入することで、インタラクティブな関係を生み出す試みである。 この「空間的な境界」は、駅から腰越漁港に向かう散歩道であり、国道から砂浜への出入り口であり、野外フェスティバルの観客席でもある。高木の根を守る大きな「植木鉢」であり、シャワールームや休憩所を内包する「建築」でもある。「土木と建築の境界」をも超えていこうとする作者の姿勢は、プロムナードから砂浜に伸びる木柱が生成する「砂丘」により、人工物と自然を一体化する壮大な計画に、最もよく現れている。
新庄勇匠『 GATES - リッタイモール - 』
「駅の雑踏」「通勤電車の車内」あるいは「居酒屋の賑わい」のような「見知らぬ他者が近接する状態(を生みだす建築)」が、作者の掲げた目標であった。一見抽象的に思えるこの目標は、一年前に中南米を旅した作者が、見知らぬ外国人と会話し、時に助けられた経験から生み出されたものである。最終的に彼が提案したものは、江の島海水浴場と周辺商店街への起点、オフィスや商業施設を内包する立体駐車場、そして駅から海岸に向かう人々が通過していく「ゲート」としての建築である。計画として荒削りな面は残っているが「他者のための建築とは何か」を真摯に追求したプロジェクトであり、既成のコミュニティに頼らず、「他者」と「現在」を見据えた提案には、未来に繋がる新たな関係を期待させる力強さがある。